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おしっこを我慢しないこと

タイトルの話に行く前に、長い前置きがある。 5年くらい前から「自分を大切にすること」を軸に据えて生きようとしている。 それ以前は、自分を大切にするなんていう発想はほとんどなかったように思う。やりたいことをやれだとか、follow your passionだとかいうことを言われたりして、そういう意味では考えたこともあったけれど、もっと根本的なところでは考えたことがなかった。だから、そうしてこなかったことにもまったく気づいていなかった。 5年くらい前の私は、愛(尊敬の念とか真心とかに言い換えてもいいかもしれない)というものの偉大さに気づきつつありながら、今振り返って思えば、それは自分以外のもの・こと・ひとに限られていて、自分のことについては蔑ろにしていた。私は、こだわりが強くて曲げられない性質である一方で、あまり自発的な方ではなくて、人に求められることで自分の存在意義を感じてしまうようなところがある。だから外面だけは良くて、ストレスが溜まって、あとでイラついたり近しい人にあたるということも多かった。(今でも思い当たる。) 私が「自分を大切にすること」を意識するようになったのは、自分を許せなくなるようなことをしたからで、そのせいで自分が傷ついて、大切な人たちを傷つけてしまったからで、またその出来事の原因が、自分を大切にしてこなかったことにあったからだ。自分のしたことについて自分を責めたいのに、必要なのは自分を許すことだっていうのは、とても難しい。 でもそれからは、努めて、行動や考えの軸を自分に置くようにしているつもりだ。人といるとき、何かをするとき、相手に尽くすよりも、まず、自分が気持ちよく過ごせているか、それをしているときの自分自身が好きかどうか、そういう視点を忘れないようにしようと思っている。(ごく自然にそれができる人は素敵だ。) 早川ユミという人がいる。地に足をつけて生活することをとても大切にしている人で、彼女の本をめくると自分の生活のヒントになるようなことが書かれている。彼女の本に 『野生のおくりもの』(2017年) というのがあって、その中に田口ランディとの対談が収録されている。田口ランディは、生活クラブの「生活と自治」での連載を読んでいて、いつも、軽やかで素敵な文章を書く人だと思っていた。そして、この、早川ユミと田口ランディの対談が、とってもよかった。 この対...

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』を読む

今、すぐにでも読みたい本や見ておきたい映像が頭の中にいくつもリストアップされている。それなのに、カメでウサギの私の歩みと言ったら。入れたものを噛み砕くのにまた時間がかかって、読める文章にするのにまた時間がかかる。まったく途方もない。それでもこの場所を、大切に水を貯めていくための作業場のようにしたい。 少し前に(と書いてからまた時間が経った…)、評判だという『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』という本を読んだ。 私の歴史の知識の程度は、いつ、どこを選んでも壊滅的だし、そもそも大きな流れというものさえまともに頭に入っていない有り様。だから、物事を考えるときに歴史的な視点が欠落している。そしてなにかあるといつも、自分の感覚と、信頼する人の発信に頼ってしまう。それだけではいかん、と、何回目かしれない一念発起中。 この『独ソ戦』は、タイトルの通り、第二次大戦の独ソ戦を概観するような内容になっている。独ソ戦の戦況の推移や双方の戦略といったことだけでなく、その背景にある経済や他国との戦況がどのように影響したか、ということについても触れられている。言うまでもなく私にとっては新しいことだらけで、ところどころ苦戦しながら読み終えた。今読んで損はない一冊だった。 ===== ヒトラーという人に漠然と抱いていたイメージが、多少、変化した。少し考えてみたらわかるはずなのに、今までまったくの考えなしで、戦争映画やなんかで、すっかり「ヒトラー=独裁者」で、周りは従っていただけ(それをよしとするか否かは別として)、というイメージを持たされていたけれど、それが少し薄らいだ。 ヒトラーはナチスドイツの人間で、ナチスドイツは国民によって選挙で選ばれた政党だ。それで彼一人だけ、狂った思想の持ち主だったっていうのは無理がある。彼をよいしょする人がいて、彼に賛同する人がいて、彼に共感する人がいた。たった一人の狂った人間のために、国が、人々が動くなんてことはない。それなりの、動く理由があって、動かす力があったのだ、と思う。 たとえば、ゲルマン人でありさえすれば劣等人種や反社会分子に優越するという考え方は、当時、ドイツ国内に広がっていた格差や分裂から、国民の目を背けさせるのに打って付けだったという。考え方の枠組みは同じままに、一つ下の階層を用意して、そこに当てはまる人を敵視させることは、単純明快で、国内の内部分裂を避けるの...